一つのトラウマ〜孝士編

哀永克樹

21世紀初頭−俺は東京にいた。

もう、何もかもがイヤになっていた。
俺の人生は、終わったようなモンだった。
そう、あの時から−。

これまでの人生、不幸続きだった。

親が無理心中を図り、俺と生まれて間もない弟が生き残ってしまったこと。
その結果、親戚をたらい回しにされ、落ち着ける場所がなかったこと。
どこへ行っても邪魔者扱いされ、二人で生きて行くことを決めたこと。

学校では「貧乏人」と呼ばれたこと。
給食費を盗まれたと疑惑をかけられたこと。
そのせいで、友人と呼べる奴が一人しかいなかったこと。

俺と弟が食べていく上で、金優先で就職したこと。
ノルマをこなせず、怒鳴られる毎日であること。
しかし、辞められない事情…

そんな俺でも、彼女がいた。
今ではもう思い出したくもないが。
もう、二度と会えない彼女。
そして、その隣にいた哲弥…

もう、どーでもよかった。俺の人生、こんなもんだったか。

何度、夜を泣いて過ごしただろうか。
弟の佑は気付いていないらしかったが(気付かれても困るが)、イヤでも思い出されてしまう。
その度に、涙が出る。
愛しくて、悲しくて、悔しくて。
楽しいはずの思い出が、悲しい思い出に変わる。
偽りだったのか、と疑いも浮かぶ。
だが、それはもう確かめられない。
哲弥と一緒に死んだ、彼女。優希。
優希の笑顔が、きれいで、可愛くて、そして…壊れる。
また、泣きたくなった。

だが、涙は突然止まった。
俺の目に、信じられないモノが見えたからだ。
気を紛らわそうと、アパート近くの不忍池を一周回ったところだった。
神社近く、自動販売機の明るすぎる光は、数メートル離れた女性の顔を映し出すのに十分だった。
優希。
足が、勝手に走り出そうとしていた。その気持ちに、ストップがかかる。
…優希は死んだはずだ。
叫びたかった。彼女の名を呼び、振り返って欲しかった。
でも・・・・・・・・違っていたら?
俺の心は、間違いなく砕けるだろう。
落ち着け。
そう、落ち着く為にタバコを取り出そうとした時だった。
ポケットに手を入れたが、何か固い物に当たった。取り出す。それは、スタンガンだった。
何で、こんな物が?
・・・・・・・・・ああ、そうか。今日は給料日だっけ。いつも現金でもらうから、護身用に持っていたんだ。
それを見ているうち、歩いていた。女性に向かって。
ほとんど無意識に、俺は、彼女をさらった。

彼女を連れて帰った時、当然のように佑は驚いた。
俺も、実は動揺していた。出た言葉が、
「面倒みろよ。」
犬や猫を拾って来たのとワケが違う!そんな事はわかっていた。
だから、俺は自分のしたことが怖くて、佑に彼女を押し付けたのだ。
だが、彼女に去って欲しくなかった。
もう、これ以上、親しい人に去って欲しくは無い。例え、似ている奴でも…
「兄さん…」
佑が部屋に入って来た。
「さっきの人なんだけど…」
その先を言うな、俺にもわかっている。
「どうしたら…」
どうしたらいい?聞くまでもない。
「逃がすな。」

久々に、俺の涙は止まった。
会社の通勤途中でも、昼休みでも、帰宅時間でも、泣くことはなかった。
あの女性は誰なのか。そんなことは知らなくても良い。携帯電話が鳴っていても無視し、俺は早く帰宅した。
すると、佑と女性が仲良く夕飯を食べていた。
「なななななななななな!」
言葉にしようとしたが、出来なかった。一気に怒りが膨れ上がり、気が付くと佑を殴っていた。
しまった!と思ったが、体が言うことを聞かない。再度殴ろうとしている…と、声がした。
「やめないと、叫ぶよ。」
凛、とした声だった。俺の腕を掴んでいるのは…優希−!また怒りが湧いて来た。
お前に言われる筋合いはない!俺は、お前に裏切られたんだぞ!なんで、俺の哲弥なんかと…!
俺の手は、彼女の首を絞めていた。
「死んじゃうよ!」
佑の声で、はっと我に返った。彼女の顔色は確実に悪い。反射的に手を離すと、彼女は足から地に落ちた。
咳き込み、息を整えている。大丈夫、生きているようだ。
俺は、佑を見た。明らかに俺を怖がっていた。
「だ、大丈夫だよ、彼女は逃げないって言ってくれたし…」
逃げない?彼女が言った?優希は俺を愛していると言った。だが、哲弥と死んだ。しかも、海外でだ。
「いくら口で『逃げない』って言われてもなぁ、カンタンに信じんなよ!人なんて口と考えてることは違うからな!」
そして、彼女をにらみつけた。
「それは…ゲホッ、本当。現に、私、逃げてない…」
その顔で、その口で、よろけながら彼女は言った。そんなこと、信じられるもんか。
佑を見た。完全に彼女を信じ切っているようだ。だが、俺は騙されない。
「どうかな。今、逃げ出さなくてもチャンスを見るってテもあるからな。」
無意識に彼女の顎を掴んでいた。だが、無抵抗だった。彼女は、何もしようとしなかった。ただ俺を静かに見つめていた。
ふっと、優希の笑顔が浮かんだ。悲しい笑み。俺がぶっきらぼうにしてしまった時の顔だ。
その顔が、彼女の顔を重なった。手の力が緩み、彼女はまた地に落ちた。
ああ、俺は優希を愛していたんだ…優希を…
知らず知らずのうち、俺は彼女を抱き締めていた。

手当てを佑に任せ、俺は冷静を取り戻そうとした。
確かに、近頃の俺は変だと思っている。佑に手を上げたり怒鳴ったり、好きでもない奴と寝たり、上司に逆らいクビになりかけたり…
特に、佑は事情を知らない。自分が婚約者だと思っていた優希が哲弥と付き合い、婚前旅行なんぞ行っていたとは…
そんな自分が馬鹿であり、佑にすまないと思っている。
問題は、彼女だ。なぜ、俺は連れて帰って来てしまったのだろう?優希に似ていた、それだけか?
ああ、あの時俺は普通じゃなかった…
「兄さん。」
佑の声で我に返った。
「彼女、気がついたよ。」
寂しそうに言った。俺をちらっと見ると、ため息を付いた。どうするつもり?とでも言いたげだった。
でも、俺には答える術がない。無言で立ち上がると、部屋へ入った。

佑は、俺に殴られたのが堪えたせいか、彼女の手足を縛り、口にガムテープを貼っていた。
これでは聞きたいことも聞けない。口からガムテープを取った。
ためらいを感じたが、現実から目を背けてはいけない。聞いた。
「お前、名前は?」
彼女は一瞬目をそらしたが、俺の目を見て言った。
「小泉…純。」
やはり、優希ではなかった。似ているが、別人だった。
「そうか…」
胸が痛む。全くの別人である、という現実。その事実を受け入れなければならないのだろうが、俺の行動は別のことをした。
思い出のアルバムをしまうかのように、彼女を押入れにしまったのだ。
そしてふすまを閉めた時、耐えられない孤独が俺を襲った。そう、今までと同じように。
その夜、再び泣いた。

とにかく冷静になろうと努めた。彼女は別人なんだと。
彼女は俺のことを知らない。だから、言った。
「俺のことは、孝士(タカシ)と呼んでくれ。何かあれば佑に言えばいい。ただし、余計なことは言うな。それだけだ。」
他人に自己紹介するような、空虚な言葉。ああ、俺はどうして自己紹介なんてしてる?
すると、声が聞こえた。
「私と、どこかで会った?」
その言葉が、我慢していた心を破った。思わず怒鳴る。
「余計なことは言うなと言っただろ!寝ろ!」
構わず、ふすまを乱暴に閉めた。涙がこらえきれない。ああ、優希はどこにもいない。別人なんだ…
悲しみが襲い、眠ることは出来なかった。

純はおとなしくしていた。
ガムテープを貼り忘れたことに気付いていたが、ふすまを開ければ彼女の顔がイヤでも目に入る。
逃がせばよかったのだろうが、なぜかそうさせる気分はなかった。
純は叫びもしなかったし、暴れることもなかった。ただ、おとなしかった。
佑が言う通り、逃げる気はないらしい。
そうした彼女の行動が、俺を信頼させた。
俺が帰って来る前、佑は純を自由にしている。そのことに気付いても、怒る気はなかった。

1ヶ月も過ぎた頃だろうか。
いつものように出勤すると、女が近寄って来た。一度だけヤケで寝たことのあるケバい女だ(こいつは色情魔だった)。
「ねえ、アンタ。顔もかっこいいし、カノジョもいない。アッチもすごく良かったんだよねぇ。」
爪のマニキュアの具合を見ながら、話して来る。俺は答える気力すらない。
「アタシと付き合わない?」
軽く、言われた。世間話や噂をするかのようだ。どうせ、コイツにとっては遊び相手なのだろう。
「俺、忙しいから。」
と言い、断ると先を急いだ。
「あんなアバズレ、まだ気にしてるの?」
俺の足が止まった。背後の声がよく通る。
「聞けば、アンタの親友と旅行してたって言うじゃない。ユーキって言ったっけ?」
ナゼ、優希のことを知っている?
「もう昔のことじゃない。アンタ、会社じゃ噂になってんのよ。寝取られたオトコ、ってね。」
けたたましい笑い声が続いた。
「どうせ親友を寝取るくらいの、いい加減な女だったんでしょ。そんな奴、忘れなさいよ。」
お前に言われたくない。
「そう、ろくな女じゃなかったのよ。アタシみたく美人で優しい人がアンタには似合うって。」
お前と比べるな。
「ねえ、もう忘れなさいよ…」
彼女は近寄り、俺の肩に手をかけ、耳に息を吹きかけた。
怒りで彼女を睨み付け、俺の体から彼女を突き放した。彼女は驚いた顔をしていた。
「二度と、俺に近づくな。声もかけるな。でなきゃ、ぶっ飛ばす。」
声が震えていた。優希を侮辱された。そのことで、頭がいっぱいだった。
同時に、辛さがまた甦って来た。せっかく抑えて来たのに!
優希、優希、優希…
気が付くと走り出していた。

そうだ、俺の優希は家にいる。
もう、頭は混乱していた。
あの角を曲がり、信号を渡り、階段を昇り、ドアを開ければそこに…!
俺は優希を押し倒していた。
そうだ、俺だけの優希だ、俺しか見えない優希だ、俺の大切な優希…
抵抗されたが構わない、俺だけのものだ…!
俺だけの?
手が止まった。
優希?
彼女は無抵抗になった。
優希?
名前を呼ぼうとして、やめた。いや、気が付いた。
優希じゃ、ない。
純は、悲しげに俺を見つめていた。
優希、デハナイ。
現実が、俺を襲った。
優希は、シンダノダ。
涙が、こぼれた。純が、見ていた。だが、関係なかった。
優希は、ドコニモイナイ。
「うあぁぁぁ…」
もう、泣くしかなかった。

涙が枯れても、俺は純にしがみついていた。
彼女の温かさが、ありがたかった。
純が、なぜ出て行こうとしなかったのか、なんとなくわかりかけていた。
そんな時、彼女は言った。
「私には、どんなことかは知らない。でも、孝士が毎日泣いているのは知ってる。…私は、力になれるの?」
何も考えられなかった。ただ、純は俺をまっすぐに見ていた。
「ちから・・・?」
意味がわからなかった。ちから、とは…何だろう?
すると純は、咳を切ったように一気に喋った。
「私が何かをしたんだったら、謝る。でも、本当に孝士のことは覚えていなくて、佑に何かした覚えもないんだ。
過去に何かあったとか、私、頭悪くて…覚えてなくて…その…」
戸惑っていた。困っていた。本当にどうして良いのかわからないようだった。
言葉の一つ一つを拾ってみた。謝る?覚えていない?佑に何かした?過去?覚えていない?
ああ、そうか、俺はコイツに何も教えていなかったんだ。本当に、何にも。
一人で考え、自分なりに考え、自分が悪いと思い、何らかの過去のせいで自分がこんな目に合っていると。
バカだなあ。
急に純が可愛く見えた。優希ではなく、純が。
「お前って、本当に変な奴だな。」
「えっ?」
話をするには体勢が悪い。俺は彼女の隣に座った。すると彼女も肩を並べて来た。
「なんで?」
よくよく彼女の顔を見た。優希に似ていると思ったが、よく見ると違う個所がある。まあ、それは当たり前か。
思えば、俺は結構失礼なことをしている。
「犯されそうになった奴が『力になりたい』だの、無断で連れてこられたのに『何かした』だの、フツーじゃ考えられねーぜ。」
「ん?」
だが、彼女は全く気にしてないようだった。
「変な奴だよな。」
なんだか、おかしくなった。俺は笑顔を浮かべていたらしい。純が不思議そうな目で見ている。
落ち着く為に、タバコに火を付けた。そして、過去を振り返り首を振った。
「悪かったな。」
心から、そう言えた。

純に、全てを話した。
優希と結婚の約束をしていたこと。
その優希が、俺の親友の哲弥と付き合い、海外で交通事故で死んだこと。
そして…
「お前には、悪いことをした。」
という、素直な気持ち。
似ていたが為に、拉致してしまったこと。
だが、そこに気が付き、後悔が俺を襲った。
「俺、本当に何をしていたんだ?君を拉致し、縛り、犯そうとして…何を?」
純を見た。俺は、コイツに何をした?何を…何を…何を!
「純、俺は君に何をした?一体何を…」
自分が侵したことはわかっていた。誘拐、拉致、暴力、束縛、独占、婦女暴行未遂…
自分が押し潰されそうになった。
だが、彼女の目は潤み、笑顔でこう言った。
「何もしてないよ、孝士。食事を与え、風呂に入り、私に休息を与えてくれた。」
「でも…」
「私は、家に帰りたくないんだ。失業中だし、どうしていいかわからなかった。」
「そんなワケないだろう?俺が…俺が…」
「本当だよ。佑と孝士がいない間はここでのんびり出来たし、家に帰れば孤独。アパート一人暮らしだし。」
「ウソだ!」
「ウソで言ってると思う?孝士がどんな意味でここへ連れて来たにしろ、私にとっては良いことだったんだよ。」
「・・・・」
「孝士の考えなんて、私にはわからない。でも、私はここから逃げなかった。それが意味するのは?」
「・・・・・・?」
「イヤだったら、逃げ出すでしょ?」
にっこり微笑んだ。俺は、彼女を見ていられなくなった。彼女は、すべてをわかっていたのだ。
俺のワガママ、俺の思い込み、俺の罪…すべてを許してくれたのだ。
「もう、いいんだよ、孝士。もう…」

泣くしかなかった。彼女の広い心に、泣くしかなかった。

聞けば、純もかなり辛い思いをして来たらしかった。
家庭内暴力、差別、いじめ、セクハラ…辛いのは俺だけじゃなかった。
だが、彼女は一人で生きている。
泣き言も言わず、孤独に耐えながら、一人で歩いて来たのだ。
「強いな、お前…」
純を後ろから抱き締め、そうつぶやいた。それに比べ、俺なんて…。
「私、強くないよ。」
静かな声だった。小さく、ため息が聞こえた。言葉を、選んで考えているようだった。

しばらく、沈黙が続いた。

日が暮れ、部屋が夕闇に消えるころ、純は俺の腕を逃れて笑顔で言った。
「佑が帰って来るし、夕飯作らなきゃ。少し前から私が手伝ってたの、知らなかったデショ?」
そう言い、彼女は背を向け冷蔵庫の材料を覗き込んだが、その仕草がわざとらしかったように見えた。
「・・・・・」
だが、それを無視し、気付かないフリをした。強がっているように見えたのだ。
俺は、触れてはいけないことに、触れてしまったのか…?

純が自由に動き回っている姿を見て、帰宅した佑は驚いていたが、ほっと安堵のため息をついていた。
「兄さん…いいの?」
彼女に聞こえないように、そっと聞かれた。
佑の目を見、笑顔を浮かべ、うなづいた。
「悪かったな、佑。」
頭に手をやり、肩越しに頭を下げた。そう、もういい。優希のことも、哲弥のことも。
「いつか、話す。」
そう言うと、俺は何ヶ月ぶりかの眠気を感じ、誘われるがまま睡眠に入って行った。

目が覚めると、隣には純がいた。もう、優希と間違えることはない。
太陽の光が優しく彼女を照らし、俺を見ていた。
「起きた?」
純の問いかけに、うなづいた。
「・・・・・いてくれたのか。」
そう、言った。思えば、逃げ出されても仕方の無いことをして来た。だが、彼女はまだここにいる。
「うん。」
そんなことを忘れたかのように、純は微笑みで答えた。
ベッドの脇で頬杖をつき、なんだか楽しそうだ。
「どうした?」
意味がわからず、尋ねた。ここにいて、楽しいことなんてあるのか?
「ようやく、孝士と話が出来そうだなって。」
俺?・・・・・正直、面食らった。
「話って、何を?」
このままでは頭がはっきりしない。起き上がり、ベッドの上に腰掛けた。すると純は隣に座って来た。
「よかった。」
彼女はつぶやき、また笑った。ワケがわからない。
「ごめんね。」
今度は謝られた。一体、何だ?
「私が、似ていて。」
どういうことだ?
純はうつむき、言葉を選んでいた。
「私が優希さんに似ていたから、混乱した。そういうことでしょ?」
う、まあ、そういうことだ。でも、なぜ純が謝る?
「私に会わなかったら、思い出すこともなかったのにね…」
暗い表情…そうか、純は俺が変になったのは、自分のせいだと決め付けていたのだ。
「それは違う。」
「え?」
絶対、違う。俺は、純のおかげで吹っ切ることが出来たのだ。
「純に会う前から、俺はほとんどノイローゼだった。優希と哲弥、二人に裏切られたことばかりを考えていた。
でも優希は俺が愛し、愛されていると思っていた。どこかで狂った歯車が、留め止めなく回り、俺を狂わせていたんだ。」
「・・・・・?」
「優希を信じたかった。哲弥を信じたかった。でも、現実は違ってたってことさ。」
ふうっとタバコを吸い、煙を目で追いながら、思いを馳せた。…今までのような、狂気に満ちた感情は浮かばなかった。
冷静になったもんだ。
そこに気付くと、純を見た。この幼さのどこにそんな力があったのだろう?
彼女はうつむいていたが、まっすぐに俺を見た。悲しげな笑みを浮かべ、視線をそらした。
「辛かったね、孝士。」
そう、つぶやいた。
辛くなかった、と言えば嘘になる。しかし−
「救ってくれたのは、純だよ。」
タバコをもみ消し、彼女の肩を抱き寄せた。温かさが伝わる。
「ありがとな。」
純は小さくうなづくと、そのまま黙っていた。

その日の夜、純は旅立った。
『いつまでもいても良い』と言ったら、
『そんなに図々しくないよ。』と笑われてしまった。
純は純なりに色々とあり、だからこそ人を癒せる力が備わったのだろう。
それが、純の優しさだった。
金目当てでもない、恋愛でもない、同情でもない。
彼女の走り去る背を見ながら、なんとなく、『友情』と言う言葉が浮かんだ。
『また、ゼッタイ、会えるよ!』
遠くで、振り返った彼女が叫んでいた。
『ごめんねー!』
ん?何を謝るんだ?
『私、ほんとうは、小泉純じゃないんだー!』
・・・・えー?!オイ!
『またねー!』
そう言うと、本当に彼女は去った。
それが、なんとなく彼女らしく思え、一人で微笑んでいた。

END



2003.09.27





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